消化器外科 ニュースレター vol.5 2015 Aug.
 
鼠径(そけい)ヘルニア、いわゆる脱腸について

脱腸という病名はよく聞くことがあると思います。正確には鼠径ヘルニアといいます。
どういう病気かというと、鼠径部(太ももの付け根)の筋膜の間から腹膜が腹腔内臓器(主に腸管)といっしょに皮膚の下に出てくるものです。
 
 

原因は?
 
@ 中年以降に見られる場合は、主に老化によって筋肉が弱くなって起きてきます。
A 先天性の場合、小児期に見られます。

治療について
  本的には手術治療しかありません。手術しないとどうなるかとよく聞かれますが、出っぱなしになるとヘルニア嵌頓(かんとん)という状態になる事があり、その場合、脱出した腸が 壊死を起こしてしまい、緊急手術となることがあります。また、嵌頓しなくても痛みがでてきたり、日常生活上具合がよくありません。よって鼠径ヘルニアと診断されれば、基本的には手術が望ましいと思われます。手術は、以前はヘルニアの出てくる部位を直接縫合・閉鎖していましたが、現在ではメッシュというポリプロピレン製の人工被覆材で穴を塞ぐ方法がほとんどです(下の写真)
 
様々な種類のメッシュが、あります。
  メッシュを使う手術法は、大きく分けて2つの方法に分けられます。
一つは、従来からの方法で鼠径部の皮膚からアプローチする方法です。もう一つは、腹腔内あるいは腹膜前腔にカメラを入れてカメラガイド下に行う手術法です。手術による創(傷)は、それぞれ以下の様になります(図1、 2)
   
 
 
(図1)鼠径部アプローチの創(傷)   (図2)腹腔鏡下手術の創(傷)
   
  当院では患者さんと相談の上、手術法を決定していますが最近では腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP 法といいます)を 積極的に行っています。その理由は、鼠径部からのアプローチと比較して次のような利点があるからです。
 
@ 手術後の痛みが少ない(かなり違います)→早期社会復帰
A 創(傷)が小さい
B 腹腔内から観察するためヘルニアの状況が把握しやすい
  などです。
 
 

【腹腔鏡下手術開始時】

腹膜の飛び出している部位が
観察できます(→)

【手術終了時】

メッシュを挿入後腹膜を縫合閉鎖して終了です。

 
   

 
鼠径ヘルニアについてご相談などありましたら、当院外来にお気軽においで下さい。
(消化器外科部長 : 普光江 嘉広(ふこうえ よしひろ)
 
 
 
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