消化器外科 ニュースレター vol.4 2015 Apr.
 
 
腹腔鏡下手術の安全性ついて

 日一日と春めいてまいりました。本年度も腹腔鏡下手術を中心として低侵襲治療(体に優しい治療)を展開していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
 さて、昨年末より腹腔鏡下手術(テレビなどでは腹くう鏡手術と言われることが多いです)についての報道が頻回に行われていますが、誤解を受けるようで非常に残念です。最初に『腹腔鏡下手術で・・・・』と出ると、それだけで腹腔鏡下手術は危険な手術なのではないか、と解釈する方もいると思うのです。以前にもニュースレターで述べましたが、腹腔鏡下手術は体に優しい手術であり、年々増加傾向にあります。大学病院などの大きな施設で全く腹腔鏡下手術をやっていないという施設は、現在の日本ではまずありません。腹腔鏡下手術が危険な手術であれば、これほど普及したでしょうか?
 
今回の腹腔鏡下手術の問題を受け、本年1月15日、日本外科学会と日本消化器外科学会は、「NCDデータを用いた全国消化器外科領域腹腔鏡手術の現況に関する緊急調査結果(速報)」を公表しました。これは2011年から2013年に登録された手術データ137万7118件の手術データから、詳細なデータが揃っている、胃切除術、胃全摘術、右半結腸切除術(大腸の手術)、低位前方切除術(直腸癌の手術)、食道切除再建術、肝切除術(外側区域を除く1区域以上)、膵頭十二指腸切除術(主に膵臓・胆道疾患の手術)の7術式の33万7069件のデータを分析したものです。これによるまとめを抜粋すると以下の通りです。
 
@ 腹腔鏡手術は本邦外科医療において毎年増加傾向にある。
A 腹腔鏡手術は死亡率で見る限り、開腹術と比べて高いという事実はない。
B 技術認定医制度等で技術の担保を行っており、有効に機能しているかの検証は今後行っていく。
 
 もちろん、この結果が日本の腹腔鏡下手術の現状をすべて網羅しているかどうかという問題はあります。
そして、今回報道されている問題についてもまだ検証中であります。したがって腹腔鏡下手術に関しては、開腹術(以前より行われている腹部を大きく開く手術)との比較・検討(治癒率、死亡率など)は今後も十分に行っていく必要はあると思います。
 
 しかしながら腹腔鏡下手術は、個々の患者さんの病態を十分に把握し、その適応の判断をしっかり行えば、決して危険な手技ではありません。そして手術後の良好な経過は開腹術とは雲泥の差があると常に実感しております。当院では、『個々の患者さんに対して最適な治療を提供する』という理念に変わりはなく、その中で腹腔鏡下手術が良い治療と判断されれば、引き続き行っていきたいと考えております。以上、よろしくおねがいいたします。
 
 
 
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